英略語を使うな

 プロジェクトの工程名に英語の略語を使っているところが結構あります。特に大手SIerが用いるウォーターフォール型の開発プロセスでよく見られます。たとえば、私の以前のエントリで取り上げた富士通のSDEMでは以下のような略語を使っています(開発プロセスの標準化と Web アプリケーション 開発への対応(PDF)より)。

UI ユーザインタフェース設計
SS システム構造設計
PS プログラム構造設計

 私はこのような英略語を使うのは反対です。なぜなら意味がわからないからです。UIと言ったらユーザインタフェース、SSと言ったらスクリーンショットと思う人もいます。「そんなの前後の文脈でわかるでしょ」と言われれば、確かにそうです。しかし、これらの語は言いやすいこともあいまってそれがわかることが「あたりまえ」であるかのように使ってしまうことがあります。たとえば、客先であるとか、まったく違う開発プロセスしか使ったことがない委託先などとの会話の中でです。

 また、英語を体感的に捕らえることができる日本人はかなり少ないことは周知の事実です。そこで発生するのが、この工程名を文字通り運用しないという問題です。

 これは特にウォーターフォールで開発している現場で起こります。たとえばSDEMでは、UI→SS→PSの順で工程が進むため、UI=第1工程、SS=第2工程、PS=第3工程ぐらいにしか捕らえていない(捕らえない)プロジェクトというのがたまにあるのです。そうすると、工程の範囲の意識にずれが生じます。これは、特に大規模プロジェクトでは由々しき事態となります。なにせ、プロジェクトごとにUI、SS、PSが指し示すものが違うのですから。


 そもそも、コンピュータシステムの開発を行っている人たちの中には「名称」の重要性が認識できていない人が少なくありません。


 「いや、わかっている。だから命名規約を作るんだ」


 そういうことではありません。名は体をあらわすといいます。私が名称の重要性が認識できていないというのは、システム的な性質、順序的な性質を名称で現そうとする一方で、それが指し示すものの意味的な性質、つまり名称が果たすべき本来の役目を名称に持たせていないケースがあるからです。

 なので「これは第1工程だから、この工程はUIと呼ぶことにしよう」なんてことが発生するのです。名称の重要性がわかっているならば「要件定義工程」「画面レイアウト設計工程」「画面動作設計工程」などにするはずです。


 ということで、誤解や意識のずれを防ぎたいのならば、略語、英語は使うなと提言したいです。


 資質の問題と言ったら確かにそのとおりですが、こういった開発プロセスは資質に左右されることなくプロジェクトを遂行するためにあるはずです(特に大手SIerのものは)。プロジェクトの脱横文字、脱略語。意外といいですよ。