人月商売で誰が得をして誰が損をしているのか

 IT 関連企業(ソフトウェア受注開発を主な生業としている企業)に対して脱人月商売を提案する記事をよく見かけます。私自身も、人月商売に疑問を持っている一人です。

 ここでいう人月商売とは、あるソフトウェアの開発を受注するときに、そのソフトウェアの開発に何人の人間が何ヶ月必要だからいくらいくらになりますという商売のことです。


 さて、この脱人月商売の提案はかなり前からありました。しかし、私のまわりで脱人月商売ができているのは皆無です。人月商売が万人にとって都合の悪いものならばすぐになくなりそうなものですが、未だに根強くあるということは、誰かが得をしているからに他なりません。いったい、だれが得をしているのでしょうか? あくまで私の実感として書かせていただきたいと思います。

へっぽこは得をしている。

 人月商売で一番得をしているのは「へっぽこ」です。技術力・生産性のないへっぽこデベロッパは人月商売がまかり通るほうが仕事をしやすいのです。それはそうです。大して難しくもないことをダラダラやっても金になるのですから。いや、むしろ、受注額は期間にかかっているのでダラダラやったほうが儲かるのです。

 また、顧客側でもへっぽこ担当者は得をします。なぜならば、人月による見積もりがもっとも簡単で(一見)説得力があるからです。担当者はシステムについてそれほど勉強する必要はありませんし、金を握っているだけの上司に決済をもらう際の説得材料としてもまぁまぁ使えます。

優秀なデベロッパは損をしている。

 脱人月商売で損をしているのは優秀なデベロッパです。なぜなら、月並みの能力なら1ヶ月かかるところを半月ででかそうものなら、貰える額は半分になってしまうからです。
 そうすると何とかして1ヶ月を費やそうとするようになるので、仕事がぐだぐだしてきます。そうするとモチベーションが下がって生産性が落ちます。技術力も停滞してきます。

お客さんも損をしている。

 能力が凡庸であるために完成に1ヶ月かかり100万円請求されるのと、能力が高いために完成に半月しかからないけれども80万円請求されるのでは、お客さんにとってどちらがいいでしょうか? ふつうは後者だと思います。デベロッパとしても後者がまかりとおったほうがモチベーションがあがることでしょう。